空を飛ぶって気持ち良い・・・
風を切るって気持ち良い・・・
心から笑ったのは久しぶりだった・・・
あっという間に、東京タワーの一番上まで来ていた・・・
「東京タワーさんありがとう・・・」
東京タワーは微笑みこう言った
「私は何もしていないよ・・・、早くあの方をダンスに誘いなさい。」
私は深くうなずいた・・・
深呼吸して、はやまる気持ちを押さえつけた・・・
「あの・・・お月様?」
すると、月が待っていたかの様にこう言った・・・
「やっとここまで来てくれたね・・・
毎晩僕の方を見て、何かを言ってくれていた・・・
でも、僕は聞き取ることが毎回できなかった・・・
その度に君は泣いていた・・・
僕も君に毎回声をかけていた・・・
でもそれは、君の元には届かなかった・・・
本当にごめんなさい・・・」
そんなに心配してくれていたかと思うと、
また、涙が出そうになった・・・
でも堪えた・・・
そして私はおそるそる口を開いた・・・
「もし、良ければ・・・、私とダンス踊ってもらえませんか?・・・」
私の胸に不安が駆け抜けた・・・もし断られたらどうしよう・・・・
怖くて私はぎゅっと目をつぶった・・・
「目を開けてください・・・」
と耳元で急に声がした・・・
私は、おそるおそる目を開けると、そこには、私より背の少し高い男の人が立っていた・・・
そしてその男の人は微笑みながら口を開いた・・・
「私とダンスを踊りません?
素敵な夜の一時を・・・・・・
言葉代わりにこのダンスで。」
私は答えに迷わなかった
「はい・・・喜んで・・・」
そう言った私の目から暖かい滴が流れ落ちた・・・
男の人が手を私の前に手を差し伸べた・・・
困ったように苦笑いしながら男の人・・・いえ、お月様はこう言った
「音楽を用意するの忘れてしまいました・・・」
「私もです・・・」
私も、お月様も困ってしまった・・・
すると、東京タワーがこう言ったのだった・・・
「月と天使のダンスに合うかわからないけれど・・・
私が音楽を奏でましょう・・・」
私は、差し伸べられた手をとり、ステップを踏み出した・・・
二人の吐く息は空中でガラスのような、きれいな雪となり、降り注いだ・・・
その雪は、魅かれあう二人に幸せをもたらし、
東京タワーが、奏でた曲は、魅かれあう二人に勇気をもたらした・・・
それは、十二月二十四日・・・
そう、クリスマス・イブの出来事だった・・・

                〜END〜       
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