天使と月のダンス

「私とダンスおどりません?」
どんなに問いかけても、あなたからの返事はこない・・・
毎晩問いかけているというのに・・・
無視されているのかしら・・・?
そう考えると、冷たい涙が頬をつたった・・・
頬をつたう滴は止まらなかった・・・
「そうしたのですか?、翼を持っているお嬢さん」
その声の方に涙をぬぐうのを忘れ、私は振り返った。
そこにはライトに照らされた、東京タワーがあった
東京タワーは、私をやさしく包み込んでくれるかのような声でさらにこう言った・・・
「おやおや、そんな泣き顔はあなたのような、美しい少女には似合いませんよ?」
私は急いで涙をぬぐった・・・
けれども、頬を伝う涙はやはり止まることはなっかった・・・
東京タワーは上を見上げてこう言った・・・
「あなたの恋にした方は、とても綺麗な方ですね・・・
しかもあんなに高いところにいる・・・
地上でダンスに誘っても、あの方にはあなたの声が届いていないのかもしれません・・・
本当にあの方と、ダンスを踊りたいのなら、背中にある、翼を使い近くまでお行きなさい・・・。」
「私は・・・飛べない天使だから・・・
あの方の所まで行きたくても行くことができないの・・・。」
私の目から涙が止まらなくなった・・・
下を向いた・・・冷たい涙は滴となり地面にポタポタとシミを作るだけだった・・・
自分でも知らない間に、手は硬く拳を作っていた・・・
東京タワーは静かに口を開いた・・・
「挑戦もしないで、あきらめるのですか?
本当にあの方の所に行きたいのなら、その背中にある翼で飛んでいきなさい・・・
もし良ければ、私の体を貸します・・・
私の体の一番てっぺんを使うと良いでしょう・・・
そこからなら、きっとあの方にも声が届くはずですよ?」
私は、最後の一滴の涙をぬぐった・・・
「私は・・・私は空を飛びたい!
お願い!私の翼よ、あの方のもとまで飛んでいきたい!」
私の翼が、初めてゆっくりと上下に動き始めた・・・
そして、私の足はゆっくりと地面から離れた・・・
「まだ・・・、もっともっと高く!
あの方はもっと高い所にいるのだから!」
私の身体は、どんどんと地面から離れていった・・・

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