〜希望の印〜

作、YOYUSA

太陽がまぶしくて、風が涼しく感じ、木の葉がざわめくそんなある日、
ある一軒の家から悲しみにくれている女の人と男の人の声がする。
女の人の悲しみのこもった声が聞こえる・・・
「お医者様、もうあの子は治らないというのですか?」
男の人の声も聞こえてきた・・・
「残念ですが・・・、もう手遅れでしょう・・・長くもっても、半年位です・・・」
女の人が泣きながらこう言った。
「まだあの子は10歳なんですよ・・・人生がやっと面白く感じてくる頃なんですよ・・・
何か・・・何か治す方法は本当にないのでしょうか?・・・」
医者の声がまた聞こえてくる・・・
「今、現在の医学で、治すことは不可能でしょう・・・」
そう言うと、家からゆっくりと出てきた・・・
家から出てきた、医者の目はかすかに潤んでいた・・・

αー1


「二階建てで、一軒家で赤い屋根、10歳であと半年位か・・・
ここで間違いなさそうだな〜、あとは、その子が男の子なら・・・」
家の前にいた男は呟いていた・・・
男は家の周りを見渡した。家には門と呼べるかわからないが、
小さい門らしき物があり男はその門をそっと開け中に入って行った・・・
門を入って右手には車が止まるだろうと思われるスペースがあり、
左手には、これまた、小さいながらの庭があった。
庭には芝が綺麗に敷き詰めら、加えて手入れも行き届いていた。
男は庭に入ると、ふと足元にあった枯れかかったタンポポが目に入った。
男は小言で呟いた
「たんぽぽ、君はまだ、死んではいけないよ」
男はタンポポに息をやさしく吹きかけると、タンポポは枯れかかっていたのが、
嘘の様に綺麗な黄色い花を咲かせたのだった・・・
それを見た男はにっこりと笑った・・・

βー1


「持って後半年・・・」一階のリビングから、聞こえてきた声・・・
父さんと母さんは絶対治ると言っていたのは嘘だったのか?
今は春だから、次の桜は見れないのか?
それ以前に、半年間、俺は生き延びることができるのか?
俺の心の中ではそんな不安と絶望と恐怖が入り混じった、
気持ちになった・・・

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